長期栄養管理で“欠乏”しがちな栄養素 L-カルニチン
長期の栄養管理で、カルニチンは足りていますか?
長期栄養管理時のカルニチン欠乏症の対策と予防
●カルニチン欠乏症と診断、あるいは発症の可能性が高い場合は、レボカルニチン製剤を使用します。
●経腸栄養管理時のカルニチン欠乏予防として、サプリメントの使用や当初よりカルニチン含有の経腸栄養剤を使用する、または切り替える方法があります。
脂肪酸のβ酸化に必要な、条件付き必須栄養素
長鎖脂肪酸トリグリセリド(LCT:Long-chain triglyceride)は、ミトコンドリア内でβ酸化されることによりエネルギーに変換されます。しかし、長鎖脂肪酸自体はミトコンドリア膜を通過できないため、カルニチンが長鎖脂肪酸と結合しミトコンドリア内に運搬する役目を有しています。カルニチンは必要量が体内合成能力を超える場合の条件付き必須栄養素といわれています。
カルニチンのエネルギー産生に関わる働きとして、以下の3つがあげられています。
①長鎖脂肪酸のミトコンドリア内への輸送。
②ミトコンドリア内のCoA/アシルCoAの比率を調節。CoAとカルニチンの置換によってできた遊離CoAはTCA回路でエネルギー産生に利用される。
③細胞毒であるアシル化合物をカルニチンエステルとして細胞外へ排出し尿中へ排泄。
カルニチンの摂取量
カルニチンの食事摂取基準(D R I)や推奨栄養所要量(R D A)はありません。しかし厚生労働省は、過度のカルニチン摂取を防ぐことを目的に、外国の摂取目安量(スイス:1000mg/日、アメリカ:20mg/kg/日)を参考にして、1日の摂取上限の目安量を約 1000mg/日としています。
カルニチンの欠乏症
加齢によりカルニチンの体内合成能が低下することが認められています。また、慢性疾患、敗血症、外傷の症例においてカルニチンの血中レベルが低下したという報告もあります。さらに、医原性として、長期経腸栄養施行(約2年6 ヵ月)の患者においてカルニチン欠乏症による高脂血症が報告されています。また、抗てんかん薬のバルプロ酸ナトリウムやピボキシル基を含有する抗生物質の投与時にも低カルニチン血症による高アンモニア血症や低血糖症が起こることが報告されています。
カルニチン欠乏時には、この他にも脂質代謝異常による様々な症状が現れます。全身性の症状として「低ケトン性低血糖症、ライ様症候群など」、各種臓器の症状としては「筋力低下、労作時の筋痛、ミオグロビン尿症、横紋筋融解症、心肥大、心内膜線維弾性症、肝腫大、各臓器の脂肪変性など」がおこるといわれています。
● カルニチンの生化学検査
一般検査の異常所見として、代謝性のアシドーシス、高アンモニア血症、CPK、GOT、GPTの異常があげられています。血中遊離カルニチンの測定値は年齢・採血時間などにより変動しますが、20μmol/L以下または80μmol/L以上で異常とされています。
なお、2014年3月現在、血清カルニチンの測定の検体検査実施料は保険適用ではありませんが、臨床検査機関などでは測定項目として確立され、また、診断薬の保険適用が望まれています。