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注目の栄養素:EPA

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EPA

EPAを用いた栄養管理

EPA(eicosapentaenoic acid)は、ω3 系脂肪酸の1 種であり、がん患者の栄養管理で注目されている栄養素である。EPA は抗炎症作用の存在が示唆されており、またがん細胞が分泌するタンパク質分解誘導因子(PIF)の活性を抑制するとの報告も存在する。このため、がん組織-宿主間で生じた炎症反応を調整し、代謝を異化亢進状態から正常な状態へと引き戻すことができるのではないかと考えられている。この炎症の調整と代謝の正常化という2 つの作用により、がん悪液質の進展を抑制あるいは改善し、栄養状態の悪化による消耗や抗がん治療の中断を回避することで、臨床転帰の悪化を防ぐことができるのではないかと期待されている。

Smith HJ, et al. Cancer Res. 2004; 64(23): 8731-5.  Simopoulos AP. J Am Coll Nutr. 2002; 21(6): 495-505.
Tisdale MJ, et al. Biochem Pharmacol. 1991; 41(1): 103-7.  Jho D, et al. Am Surg. 2003; 69(1): 32-6.

EPAの作用メカニズム

EPA を補給することにより、IL-1、IL-6、TNF-αなどの炎症性サイトカインの産生が減少し、たんぱく質分解誘導因子(PIF)の活性が低下する(図)。

Tisdale MJ, Beck S. Biochem Pharmacol. 1991; 41(1): 103-7.  Wigmore SJ, et al. Nutrition. 1996; 12(1 Suppl): S27-30.
Wigmore SJ, et al. Br J Cancer. 1997; 75(1): 106-9.

EPA代謝の最近の知見

EPA に関する最近の研究では、従来から知られていたアラキドン酸代謝系への拮抗作用に加え、抗炎症作用を持つ生理活性物質(脂質メディエーター)への代謝に関心が寄せられている。EPA が代謝される脂質メディエーターでは、レゾルビンと呼ばれる一連の化合物が注目されており、中でもレゾルビンE1 が高い抗炎症作用を有していることが明らかにされつつある。

有田 誠. 臨床検査. 2012; 56: 165-70.

レゾルビンの働き

レゾルビンE1 は、血管中から単球の遊出を促し、単球はマクロファージへと分化する。一方、好中球の浸潤を抑制することから、損傷部位への好中球の集積は抑えられる。また、マクロファージがアポトーシスした好中球を速やかに貪食し排除することでサイトカインの放出が抑制され、炎症を積極的に収束させると考えられている。さらに、貪食後のマクロファージのリンパ系への移行を促し、損傷部位からの異物除去を速やかに進行させ、炎症の遷延化が抑制されると考えられている。
下右の表は、動物モデルを用いた各種の試験により確認されたレゾルビンE1 の抗炎症作用である。
このように、様々な動物の様々な部位で、一貫して抗炎症作用が認められていることから、レゾルビンE1 が非常に高い抗炎症作用を有していると期待されている。

辻本智也ほか. 臨床栄養. 2012; 121: 494-8.
有田 誠. 臨床検査. 2012; 56: 165-70.

* P. gingivalis: Porphyromonas gingivalis、歯周病の原因菌
** TNBS: 2,4,6- トリニトロベンゼンスルホン酸

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